インターネットの障害は3月に63%増加、ISPへの影響が多大
同レポートは、ISP、パブリッククラウド、CDN、DNSを対象に調査を行い、新型コロナウイルスでインターネットにどのような変化があったのか、地域やプロバイダの枠を超えて、その影響を長期的に調査しました。プレスリリースはこちらを参照してください。
本ブログでは、「2020インターネット・パフォーマンス・レポート」から、日本およびアジア太平洋地域の所見を抜き出しました。なお、こちらで記載しているネットワークの障害は、100%のパケットロスを検知したノードを対象としており、メンテナンス等による一時的な停止も含みます。
1:アジア太平洋地域の障害傾向について(P.12)
アジア太平洋地域におけるネットワーク障害の週次の傾向は、北米といくつかの共通点があります。いずれの地域でも、調査期間を通じて急激な増減が見られますが、アジア太平洋地域では3月と4月の一部においてその起伏が一段と大きくなっています。いずれの地域も1月12日週に大きな山が見られますが、その件数はアジア太平洋地域の方が顕著です。
1月の増加は、アジア太平洋地域における年始の休暇に連動すると見られます。北米では年始の仕事始めがアジア太平洋地域より早く、1月6日週からネットワークへの影響が出ています。EMEA地域でも同様の傾向が見られますが、急激にその数が増えたのは1月19日週と、アジア太平洋地域より遅くなっています。
2:クラウドとISPの障害傾向について(P.24)
パンデミック前後のいずれも、クラウドにおける障害件数は全体の10%でISPの80%よりも安定していました。その理由としては、今日のクラウドプロバイダのネットワークはバックボーンとしてデジタルサービスの提供を担っており、インターネットの一部となっています。世界中に分散されたネットワークエッジがユーザーにより近い場所でつながり、急激なトラフィック増加にも柔軟にスケールアップして対応することができたようです。
3:障害の発生時刻について(P.32)
アジア太平洋地域の営業時間(9~18時、日本標準時)に発生したクラウドの障害件数の割合は24%で、現地でビジネスへの影響は軽微でした。
なお、北米では、ネットワークの設定変更が就業時間内の日中に一元的に行われることが多くあります。北米での設定変更がネットワークの障害や停止に結びつくことがあるため、アジア太平洋地域では日中、営業時間内にその影響を受けることが比較的少ないと想定されます。
4:パンデミック以降のネットワークについて
COVID-19の感染拡大により、リモートワーカーの数が急増しました。重要なアプリケーションやインフラへのアクセスにはVPNを介して接続する必要があり、外部からのアクセスに加えてデータセンター経由のクラウドサービスへのアクセスなど、トラフィックパターンが多様に変化しました。さらに、チャットやビデオ会議等のコラボレーションツールの利用も急増し、クラウドサービスやインターネットへの依存度も大幅に増しました。
国内でも、自宅Wi-Fiや低帯域のインターネット接続が原因の想定外のトラブル、VPNゲートウェイがボトルネック化した、自社要因なのか外部なのか、障害切り分けが困難になったという声が弊社に寄せられています。
今後は社内ネットワークやデータセンターの監視のみならず、リモートワーカーによるVPN接続やその先のインターネットを含めた End-to-Endのネットワーク設計と監視が重要になります。